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高炉ーマッドガンの威力

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「華麗なる一族」も来週が最終回ですね。このドラマのお陰で、自分の製鉄マンとしての記憶が甦ってきました。
 前回、高炉の開孔機の話をしましたので、今日は出銑止めの話をします。
高炉は全体が鉄で囲まれていて内部に煉瓦が詰められている構造ですが、唯一穴が開いているところが「出銑口」です。粘土のようなものを詰めておいて、当時は2メートルくらいの鉄の棒(今は5メールと位)を突き刺して穴を開け、溶けた鉄が出てきます。溶銑が出てくるときに粘土が削られて穴が大きくなると同時に、炉内の溶銑のレベルが下がってきて炉内のガスを巻き込んで沢山の火花を伴うようになります。これを「荒れてきた」と言いますが、そうなると出銑止めの準備に入ります。「田中熊吉伝」によると、鉄の棒の先に粘土(マッドという)をつけて、何回も穴に詰めて止めたということです。
 荒れ狂うような火花の中を鉄の棒を持って突進するのです。まさに火事場に飛び込むようなものです。今の我々では到底考えられない作業です。
 「こんなに大変な訳がない」と、1912年田中熊吉さんが38歳のときに、ドイツに派遣されます。そもそも東田第一高炉がドイツの技術援助でもってできたものの筈なのに、肝心なところが隠されていたのでしょうか。一介の職工であった田中熊吉さんが、マッドの成分、マッドガン、さらには大型高炉の設計図までを盗み書きして帰ってくる。
 マッドガンとは、見た感じは大砲のようなかっこうで、トコロテン押し器みたいに中に詰めたマッドを押し出す装置です。現在も油圧式のマッドガンが使われています。出銑止めの時は、マッドガンの砲身先端を出銑口に押し付けて、中ならマッドを注入します。溶銑が出ている口は、カスが付着しているので、直前に空気を吹き付けてきれいにします。その作業は未だに人力で、粕取りがうまくできないとマッドガンが圧着せずにマッドが横に漏れたりします。その漏れは、炉前の担当者にとっては「恥」であり、とても神経を使う作業です。さすがに私は一度もさせてもらえませんでした。
 出銑止めに失敗すると、再度挑戦しますが、出銑口でも破損するともう難しく、休風に至ることもあります。休風となると生産量が大幅にダウンするので、製鉄所で言えば所長まで報告される一大事です。ところが、高炉というのは扱いにくいものというのが、製鉄所の中の常識でもあり、「ちょっと休風しましたけど大したことはありません、すぐ取り戻します」とあっけらかんと言うのが製銑部長の役割でもあります。

Posted by さだ at 2007年03月11日 23:04 │Comments(0) | TrackBacks (0)
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