本日、西日本新聞でも話題になっている運賃に対する意見聴取に、地区会の長という立場で行ってきました。安い運賃に反対するという立場は、一見「悪代官」のように見られがちで苦しいのですが、本当に「持続性のある」運賃になり得るのか、新聞も客観的に精査すべきものと思います。以下、提出した意見書の全文を披露します。
平成19年12月6日
九州運輸局長 大黒伊勢夫 殿
北九州タクシー協会折尾地区会
会長 貞包 健一
○○タクシーの申請に対する反対陳述書
1.意見の要旨
今回申請の時間制運賃については、新規需要を創造する性質の値下げではなく、いたずらに安価に設定することで他のタクシー事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがある。また、時間制運賃の中に距離制運賃を設定するという運賃制度は、2重の距離制運賃を含むことになり、顧客のみならずタクシーの運賃制度そのものに大きな混乱を与えるものと予想される。よって、周辺事業者として断固反対の意を表明するものである。
2.具体的な理由
1)北九州地区の運賃改定は、11月26日に認可された。運賃改定の認可にあたっては、原価計算対象会社を選定し、対象会社は詳細な原価計算書を提出し、数ヶ月にわたる運輸局の査定により、半年かけて自動認可運賃が公示されるものである。この自動認可運賃の水準は、「適正な人件費や原価を補うために必要な運賃」として計算されたものである。
ところが、今回申請の運賃は、この自動認可運賃から大きく安価に外れるものであり、これを正常な会社運営を行う運賃と認めることは、先の運賃改定の作業を完全に否定することになる。
数十社の原価計算の作業は何だったのか?たった1社の下限割れ運賃の査定が成り立つとすれば、そもそも原価計算とは何なのだろうか、必要なものなのか疑問を抱かざるを得ない。
総括原価方式という現在の運賃認可制度を存続させるのであれば、制度的に矛盾のないような対応をしていくべきである。
2)今回の申請内容については、無認可とは言え実績があることから、実績を根拠に正当性を説明すると考えられるが、安易な査定は行わないことが肝要である。
北九州市内の同じ運賃でも、運送収入の水準はかなりバラツキがあり、会社の原価計算上も当然バラツキがある。ところが、各社とも経営を継続している訳であり、結果として原価計算上は収支バランスを取っていることが多い。これは、役員・事務・配車・管理者などの人件費率、乗務員の歩合比率、車両の原価償却費、固定資産の有無等である程度調整しているからである。しかし、それぞれの原価の水準は、必ずしも適正なものではないと考えるべきである。
また、運賃を値下げした効果として、当然に他社の需要を取り込むことで相応の売上向上は得られていると考えられる。しかし、この増収でもって値下げを肯定するのであれば、そもそも他社の値上げという行為は否定されるべきであり、10%の自動認可運賃も合理性に欠けるということになる。
「不当な競争」であるかどうかを判断するには、同様な運賃を他社が導入した場合にも両社に顧客を奪い合うような悪影響がないかどうかを精査すべきである。今回の時間制運賃については、明らかに他社の需要を取り込むことで増収となるものであり、不当な競争を引き起こすものであると憂慮している。
3)今回の時間制運賃は、1時間3,200円となっている。1時間3,200円の収入と言っても、実際には片道30分で運送し30分かけて引き返してくるので、最大でも1,600円の収入しかならない。
実車率から考えてみても、実車率=40%とし、通常は1日の中で走行している時間が50%程度であり、それを最大限みて80%としても、
3,200円×0.4×0.8=1,024円/時間の収入しかなく、給与歩合を45%とすると、
1,024円×0.45=460円/時という時給で最低賃金を割ってしまう。この時間制運賃で、最低賃金以上を正当に得ることができるようになっているか甚だ疑問である。
4)今回の申請では、時間制運賃の項目の中に距離制運賃を設定している。ということは、2種類の距離制運賃が存在することになる。距離をメーターで測るとすれば、2種類のメーターを備えなければならないということになる。
2種類のメーターを設置することを是とするならば、今回のようなケースだけでなく全く別の距離制運賃を同一の車両で申請することを可能とするのか。あるいは、同一の会社内で例えば下限運賃の車両と上限運賃の車両を分けて運行することも是とするのか。今後の展開を考えると、慎重な判断が必要ではないか。
5)時間制運賃は、「営業所においてあらかじめ特約がある場合に適用する」とあるが、距離制か時間制かの選択権が会社にあるようでもあり、利用者にとって不明瞭な制度である。
6)時間制運賃の場合、800円刻みであることから、わずかな距離(時間)で段階があがる状態の時には、顧客とのトラブルが生じやすい。従って、メーター等で正確に計量することが必要であり、メーターの正確性は検定されるという前提が必要である。
3.最後に
タクシーは、公共交通機関であって、これからの高齢社会にとって大変重要な個別輸送交通である。規制緩和の流れの中で、各企業が競い合ってサービスを向上させることは必要なことであるが、公共交通としてのタクシーの基本的な運賃が異なることは、各地の乗場等の状況をみても、必ずしも利用者にメリットとなっておらず、むしろ混乱を与えているだけのケースが多い。
本来は、地域のタクシーが一体となって、高齢者や移動制約者などに対して、もっと前向きな運賃制度などを提案するなど、真に需要の喚起ができるもの、あるいは利用者の利便性が向上するものを考えていくべきではないでしょうか?規制緩和だからといって、個別の極端に安価な運賃を認めていくことは、タクシー業界自体の和を壊してしまい、将来の一体的な取組みに完全にストップをかけてしまうことになる。
運輸行政に携わる行政にお願いしたいことは、タクシーの「将来の絵」をどう描くかを一緒に考えていただきたい。大阪のような多様な運賃が将来の希望でしょうか?私たちは、将来、バスや鉄道と肩を並べて堂々と公共交通機関と言えるようなタクシーを夢見ています。例えば、通勤にも通学にもタクシーの選択肢があたりまえに入ってくるとか、空港などへの交通アクセスの検討にタクシーも加わり料金なども行政と一緒に議論できる、とか。こういった公共的な検討に、基本的な運賃がバラバラであってどうして参加できるでしょうか?
大変失礼ですが、「何も将来のことを考えない運輸行政」であって欲しくないと思っていますし、きっとそうではないと確信しております。
この意見書を読ませて頂き、ここまで説得力のある考えが、過去業界にあったのだろうかと思いました。
この内容は、業界のエゴと言う批判はあたりません。
最後のほうに・・タクシーの公共性を述べられていますが、
涙が出るほど嬉しかったです!!。
Posted by タケタク 2007年12月07日 09:02